ウォーミングアップとクーリングダウン

運動や試合において、良いパフォーマンスを発揮するために、事前に心身の準備をすることを目的としたトレーニングをウォーミングアップといいます。

また、運動や試合において蓄積した疲労をできるだけ早期に回復するためのトレーニングをクーリングダウンといいます。

これらは外傷・障害予防の観点からも大変重要で、スポーツを楽しむ人や競技スポーツをする選手にとって不可欠なものです。



 

 

 

 

 

 

 

〈ウォーミングアップの目的と効果〉

  • パフォーマンスの向上と、トレーニング(練習)の効率化・・・あらかじめウォーミングアップを行うことで、効果的に運動を行うことができます。また徐々に緊張、集中力を高めていきます。
  • 外傷・障害の予防と、コンディショニングのチェック・・・柔軟性の向上や酸素運搬能力の活性化、神経反応時間の短縮などによりケガを予防することができます。また、身体的コンディションの確認と、技術や戦術のリハーサルを行うことができます。

  • 体温(筋温)の上昇・・・筋温を上げることで、筋力の発揮や関節の動きがスムーズになります。それにより筋肉や腱の柔軟性が高まり、関節可動域が広がります。

     

     

     

    〈クーリングダウンの目的と効果〉

 

  • 疲労回復・・・筋肉中に産生された疲労物質を早期に除去することができます。

  • 外傷・障害の予防・・・疲労した筋肉の柔軟性や関節の可動域を、運動前の状態に早く戻すことができます。

  • めまい、吐き気、失神を防止する・・・急激に運動を中止すると血圧が低下するため、徐々に運動強度を下げます。

  • 精神的に落ち着くことができる・・・1日に複数の試合があるときなど、気持ちの切り替えとしても重要です。

〈ウォーミングアップとクーリングダウンの種類〉

 

ウォーミングアップの種類

 

パッシブ(他動的)なウォーミングアップ:身体を動かさずにウォーミングアップ効果を得るもの
シャワー、温浴、マッサージ、パーソナルストレッチ、ホットパック、超音波など

 

 

アクティブ(活動的)なウォーミングアップ:実際に身体を動かし、身体の内面から体温を上昇させて効果を得るもの

 

  • 一般的ウォーミングアップ:筋温を上げ基本動作を実施して、各部位の動きを円滑にする

      ウォーキング、ジョギング、水泳、スキップなどの基本ドリル、ストレッチ、各種体操

     

  • 専門的ウォーミングアップ:競技特性や予防すべき傷害を考慮したもの

         技術系、スピード系、パワー系、持久系、神経系(敏捷性・集中力・反応スピードなど)

    パッシブなウォーミングアップは、アクティブな一般的・専門的ウォーミングアップと併用して行うものであり、パッシブなものだけでウォーミングアップを終了することは、準備として不十分です。ですがケガや疲労がありながらプレイせざるを得ない競技者にとっては非常に効果的であるため、あくまでもアクティブなウォーミングアップの補助として用いていくようにしましょう。

     

     

    クーリングダウンの種類

    パッシブリカバリー(消極的休養)アイシング、交代浴、マッサージ、鍼灸治療など

    アクティブリカバリー(積極的休養)ジョギング、自転車エルゴメーター、水中歩行、水泳、ストレッチ、体操など

    運動によって筋肉中には疲労の原因となる代謝物が産生されます。アクティブリカバリーとして適度な有酸素運動を行うことにより、この代謝産物を早期に除去することができます。運動後何もしないで終わった時と比較すると、代謝産物の除去スピードは2倍近くも速くなるのです。またウォーミングアップと同様に、パッシブなものを補助的に取り入れることによって、疲労回復や傷害予防としてより効果を発揮することができます。

 

〈ウォーミングアップの順序〉

 

  1. 体温(筋温)を上げる
    軽めの有酸素運動を行うことで体温(筋温)を上げ、筋肉の柔軟性を高め、筋力の発揮や関節の動きをスムーズにします。(ウォーキング、ジョギング、自転車エルゴメーターなど:515分)
  2. 静的ストレッチ
    体温が上昇したら、ゆっくりと呼吸を整えながら、反動をつけずに筋肉を伸ばしていきます。(1種目1015秒)
  3. 動的ストレッチ
    競技動作に関連した柔軟性を高めていきます。特定の競技動作や、動作パターンに準じた動きで関節可動域を広げていきます。(ブラジル体操など:510分)
  4. 呼吸循環機能を高める
    一般的な動きに専門的な動きを加えながら、運動強度を徐々に上げ、競技特性に準じたレベルまで上げていきます。(ラダーやマーカーを使用したジャンプ、スキップのフットワークドリルなど:515分)
  5. 競技特性を考慮した仕上げ
    競技特性にあった要素を入れ、ここで最終的な目標レベルまで上げます(野球のキャッチボールやバッティング、サッカーのドリブルやシュート、バレーボールのレシーブやスパイクなど)。最大筋力発揮が必要な競技は、ジャンプやダッシュなどのパワー系、スピード・アジリティ系の要素を入れ、神経系、筋肉に刺激を与えます。また、有酸素系の競技は種目の必要性に応じて強度を調整し、技術系の競技は実戦をシュミレートしていきます。(1015分)
     

 

〈クーリングダウンの順序〉

 

  1. 軽度の有酸素運動

    競技特性に合った軽い有酸素運動により、筋肉中に産生された疲労物質を早期に除去することができます。(ウォーキング、ジョギング、自転車エルゴメーター、スローペースの水泳など:1015分)

  2. 筋肉の柔軟性、関節可動域を戻す

    運動後の身体は、運動強度が高いほどアンバランスな状態になっています。ストレッチや体操を行うことにより運動を行う前の状態に早く戻すことができ、疲労回復や外傷・傷害の予防につながります。使用した大きな筋群から順に伸ばし小さな筋群へと移行していきます。(1種目2030秒:1015分)

 

 

 

競技特性によってウォーミングアップとクーリングダウンの方法は様々です。同じ競技であっても個々の特性は異なるため、基本的なものに個別の特徴に合ったものを加えていかなければなりません。自分自身の身体的な特徴をよく把握し、普段から様々なケースを想定して、独自のウォーミングアップやクーリングダウンを確立していくことも大切です。

 

また、ウォーミングアップに比べてクーリングダウンは、運動の量や質、練習時間の都合や試合結果に左右されて、行われたり行われなかったりするケースが多くあります。疲労回復や外傷・傷害予防のためにも、運動の内容や競技の結果にとらわれず、必ず行うようにしましょう。

 

 

 

 

ケガを予防するためのウォーミングアップの工夫

ウォーミングアップの目的の一つに「外傷・障害の予防」があります。そのウォーミングアップの中に簡単なトレーニングを取り入れることで、ケガの予防やコンディショニング、パフォーマンスの向上へとつなげることができます。

FIFA(国際サッカー連盟)や日本バスケットボール協会では、作成されたプログラムがケガの予防に非常に有効であり推奨されていますので、日々の練習の中で取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

日本サッカー協会HP http://www.jfa.jp

 「The 11+ (サッカー外傷・障害予防プログラム)」

 

 

日本バスケットボール協会HP http://www.japanbasketball.jp

 「ジュニア向け外傷予防プログラム」